ブリュートナーは、グランドピアノの新しい形式のアクションを開発するなど、さまざまな改良を行っているが、その最大のものは”アリコットシステム”と呼ばれる弦の装置である。この装置は、現在もブリュートナーの最高級のグランドピアノにつけられている。ここに紹介したピアノ【model.Ⅳ】にも勿論ついています。
アリコットシステムは別名アリコットスケーリングとも呼ばれており、ブリュートナーの説明書には次のように解説されている。
「一般のグランドピアノの高音部の各音には弦が三本ずつつけられている。」それにもかかわらず、ピアノの高音部の音は、その低音部の強大な音量に打ち負かされてしまうのが普通である。そのため、ピアノのメーカーは、長年の間この高音部の音を改良することに努力を積み重ねてきた。ブリュートナーのグランドピアノでは、アリコットスケーリングを採用することによって、この問題を解決している。アリコットスケーリングとは、一般の三本の弦の他に、さらに一弦増やして四本弦にすることである。ただし、この四本目の弦はハンマーによって叩かれず、共鳴の原理によって共振運動を起し、倍音を出す。
このアリコットスケーリングの方法によれば、高音部のそれぞれの音の含有倍音が増加し、音色は極めて芳醇なものとなる。ブリュートナーのピアノの名声が高められている理由の一つとして、アリコットスケーリングは大きな力となっている」